飲食店の「歩留まり」とは何か?基本概念を理解しよう
飲食店経営をしていると、毎日のように食材と向き合うことになります。そんな中で「歩留まり」という言葉を耳にしたことはありませんか?
歩留まりとは、仕入れた食材の総重量に対して、実際に調理に使える食材の割合を指します。言い換えれば、「食材を購入したときの重量」と「調理で実際に使える重量」の比率のことです。
例えば、キャベツを10kg仕入れたとします。しかし、芯や傷んだ外葉を取り除くと、実際に調理に使えるのは7kgだけ。この場合、歩留まり率は70%となり、30%が「ロス」になっているわけです。
多くの飲食店オーナーが見落としがちですが、この歩留まりの差は原価計算と利益管理に大きな影響を及ぼします。正確に把握していないと、メニューの価格設定が誤ったり、実際の利益率が予想より低くなったりしてしまうのです。
歩留まりと「食材ロス」は別もの
ここで重要なポイントが1つあります。歩留まりと食材ロス(フードロス)は異なる概念だということです。
歩留まりは、食材を調理するうえで必ず発生する自然なロスです。野菜の芯を取る、肉の脂を落とすなど、調理プロセスで避けられません。
一方、食材ロスは、本来は売上に繋がるべきだった食材が無駄になる場合を指します。期限切れの食材を廃棄する、仕込み過ぎて使い切れない、など経営改善で減らせるロスです。
食材ロス率の計算方法と業態別の目安と合わせて理解することで、より正確なコスト管理が可能になります。
歩留まり率の計算方法を実例で学ぶ
歩留まり率を正確に計算することは、原価管理の基本です。実際の計算方法を見ていきましょう。
基本の計算式
歩留まり率の計算は意外とシンプルです。
歩留まり率(%)=(調理後の正味重量 ÷ 仕入れ時の重量)× 100
例を挙げて説明します。
実例1:野菜(玉ねぎ)の場合
- 仕入れ時の重量:5kg
- 皮と芯を取り除いた後:4.2kg
- 計算:(4.2kg ÷ 5kg)× 100 = 84%
玉ねぎの歩留まり率は84%なので、16%が調理での歩留まりロスになります。
実例2:肉(鶏むね肉)の場合
- 仕入れ時の重量:10kg
- 皮と余分な脂を取り除いた後:8.5kg
- 計算:(8.5kg ÷ 10kg)× 100 = 85%
鶏むね肉の歩留まり率は85%。この数字を頭に入れておくことが、原価計算の精度を高めます。
実例3:魚(鯛)の場合
- 仕入れ時の重量:2kg(丸ごと)
- 頭、内臓、骨を取り除いた後:1kg
- 計算:(1kg ÷ 2kg)× 100 = 50%
丸魚は歩留まり率が低い傾向があります。これを加味していないと、メニューの原価が大きく狂うことになります。
歩留まり率が原価管理に与える影響
歩留まり率を正確に把握することの重要性を、具体的に見てみましょう。
メニュー価格設定への影響
メニュー価格を決める際、多くの店では「食材の仕入れ値 × 原価率」という計算をします。しかし、歩留まり率を考慮していないと、この計算は成り立ちません。
例えば、玉ねぎを使ったスープを作るとします。
- 玉ねぎの仕入れ値:1kg当たり200円
- 1杯のスープに使う玉ねぎ:200g
歩留まり率を考慮しない場合の計算:
200g × 200円 ÷ 1,000g = 40円
歩留まり率84%を考慮した計算:
(200g ÷ 0.84)× 200円 ÷ 1,000g = 約48円
わずか8円の差ですが、1日100杯売れる店なら月間で24,000円の原価差が出ます。この誤差が積み重なると、期待していた利益率に到達できなくなるのです。
原価率計算の正確性
原価率の目安とは?計算方法と今日からできるコスト削減術でも触れますが、原価率は飲食店経営で最も重要な指標の1つです。
歩留まり率を無視した原価率の計算では、実際の数字とズレが生じます。結果として、経営判断を誤ることになりかねません。
複数店舗の比較分析
多店舗展開で失敗しないために、各店舗の数字を正確に把握することは不可欠です。
歩留まり率を統一した基準で管理していないと、店舗Aと店舗Bで同じメニューを提供していても、実際の原価が異なってしまいます。これでは、本当の経営課題が見えなくなります。
食材別の標準的な歩留まり率
毎回手作業で歩留まり率を計算するのは大変です。参考になるように、一般的な食材の標準的な歩留まり率をまとめました。
野菜の歩留まり率
- キャベツ:75~80%
- 玉ねぎ:85~90%
- 人参:80~85%
- 大根:70~75%
- じゃがいも:80~85%
- トマト:90~95%
- きゅうり:90~95%
- レタス:70~75%
肉類の歩留まり率
- 鶏むね肉:85~90%
- 鶏もも肉:80~85%
- 豚ロース:90~95%
- 牛肩ロース:85~90%
- 牛ひき肉:95~100%
魚類の歩留まり率
- 鯛(丸魚):40~50%
- アジ(丸魚):60~70%
- 鮭(切身):90~95%
- 白身魚(切身):95~100%
ただし、これらは目安です。仕入れ先や季節、商品のグレードによって変わることもあります。できれば、自分の店での実測値を把握することが理想的です。
正確な歩留まり率を測定する方法
標準値は参考になりますが、自分の店での実際の歩留まり率を把握することがより重要です。
ステップ1:測定対象を決める
まずは、毎日使う主要な食材3~5品に絞ります。全ての食材を同時に測定しようとすると、現場の負担になります。
ステップ2:仕入れ時の重量を記録する
食材を仕入れたときの重量をスケールで計測し、記録します。複数回の仕入れで平均値を出すとより正確です。
ステップ3:調理前後の重量を比較する
仕込み時に、皮むきや芯取りなどの処理後の重量を計測します。毎日記録することで、より正確な歩留まり率が算出できます。
ステップ4:定期的に見直す
季節や仕入れ先によって歩留まり率は変わります。月に1~2回程度、再測定することをお勧めします。
歩留まり率を改善するアクション
歩留まり率が把握できたら、次は改善を考えましょう。
仕入れ時の工夫
歩留まり率が低い食材は、あらかじめカットされた状態で仕入れることも検討できます。若干単価は上がりますが、実質的な原価が下がる場合もあります。
食材仕入れ先の選び方を見直す中で、こうした検討も組み込むと効果的です。
調理技術の向上
スタッフの調理技術が向上すれば、ロスを最小限に抑えられます。業務マニュアルに歩留まりを意識した仕込み方法を組み込むのも良いでしょう。
メニュー設計の見直し
歩留まり率が低い食材の使用を減らすメニュー構成に変更することも、原価改善の手段になります。
歩留まりをコスト管理全体に組み込む
歩留まり率の把握は、単独では価値がありません。他の原価管理指標と組み合わせることで、初めて経営改善に繋がります。
コスト管理方法|利益を残すために見るべき5つの数字では、原価率と同時に確認すべき指標を解説しています。合わせてご覧ください。
また、FLコスト(FL比率)とは?目安と改善する具体策を改善する際にも、歩留まり率は重要な要素になります。
正確な原価管理のためには、データ経営の観点から、毎日の食材のロス・歩留まりを可視化することが理想的です。
在庫管理と歩留まり率の関係
歩留まり率を管理することは、在庫管理を仕組み化することにもつながります。
例えば、歩留まり率が低い食材は、実際の必要量より多めに仕入れる必要があります。しかし、在庫が多すぎると、腐らせてしまうリスクも高まります。
歩留まり率を正確に把握していれば、適切な仕入れ量を計算でき、無駄な在庫を減らせます。結果として、食材ロスも削減できるのです。
まとめ:歩留まり率の把握は経営改善の第一歩
飲食店の歩留まり率は、多くのオーナーが見落としている重要な指標です。しかし、原価管理、メニュー価格設定、多店舗管理など、経営全般に大きな影響を与えます。
正確な歩留まり率を把握することで、以下のメリットが得られます:
- メニュー価格の精度が上がり、想定通りの利益率を確保できる
- 原価率の計算がより正確になり、経営判断の精度が向上する
- 食材ロスを削減でき、コスト改善に繋がる
- 複数店舗の数字を正確に比較でき、各店の課題が明確になる
今すぐ、あなたの店での主要な食材3~5品の歩留まり率を計測してみてください。その数字が、あなたの経営改善の第一歩になるはずです。
ただし、毎日手作業でこうした数字を管理するのは大変です。正確な売上予測と組み合わせて、最適な発注量を算出し、食材ロスを減らす仕組みを作る必要があります。
もし、日々の原価管理や発注業務が煩雑になっているなら、一度専門家に相談してみることをお勧めします。データに基づいた経営改善のサポートが、あなたの店の利益を大きく変えるかもしれません。
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